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2M(森伊蔵&魔王)[芋焼酎]

2M   当初、芋焼酎に関しては、
「これ美味しいから、飲んでみい!」って勧められても、自分は『芋臭くて苦手』っていう先入観がすでに出来上がっていたので、
「いや、僕はいいです…。」と断ることが常であった。   学校(当時の勤務先)の飲み会に対しては、主催が学校や父母会であれば、あまり勝手に出来上がってしまってもいけない場であることが多いので、できる限り出席したくはなかった。とはいえ、それ以外にも、同僚を含めた学校関係の方々と、個別あるいはグループで飲みに行く機会はあり、それなりに気の合う連中と飲みに行くことは吝かではなかった。
  二学期の終わりに学年の役員と教職員の打ち上げ(学年会は行かない訳には…)があり、二次会が終わり、結構出来上がっていたし、遅い時間でもあったが、
「もう一軒行こう!」と大きな声で校長が言うので、付き合った。連れて行かれたのは、飲んで話をするだけの、ママと女の子が一人の小さなスナックだった。後から知ったが、そこのママの子は、学校を中退したとのこと。(どうして、校長が中退した生徒の親の居るスナックに通ってるのかは??)   自分も三軒目だし、校長キープのボトルで水割りを頼んで座った。
「えっ!森伊蔵って中入ってるの?」棚の上の方に一升瓶があり、『森伊蔵』のラベルが目に入った。女の子が瓶を下ろし、少し振って、
「少し残ってます」と言う。
「それいくら?」って尋ねると、
「二千七百円です」
「一杯?」しばしの沈黙。『う〜ん、高いけど…』ってちょっと躊躇した後、
「じゃあ、それ校長と自分の分、一杯ずつ。オレ出すし」初めて出会ったプレミア焼酎の代表。(これを逃すとまたいつ出会えるか分からない…)そういった強迫観念にも似た思い(単に酔って気が大きくなってただけかも)で、注文。
「何で飲みますか?」
「ロックで!」ということで、初めて森伊蔵を味わう。十分酔っていたとはいえ、焼酎特有の臭みのようなものは全く無かった。
「これ原料何です?」女の子がぐるっと一升瓶を回し、ラベルを見て、
「芋って書いてあります」『えー。こんな芋焼酎もあったんや!』当時、自分の抱いてた『臭い』という芋焼酎についての固定観念が崩れた。
  さらに棚をよく見ると、森伊蔵の一升瓶の横に『魔王』というラベルの一升瓶が並んでいた。
(えー。魔王も置いてるんや!)3Mと呼ばれるプレミア焼酎のうちの2Mがこの小さなスナックには置いてあった。(プレミア焼酎は飲んだことはなかったが、それなりに知ってはいた)
「魔王は一杯いくら?」
「二千五百円です」
「じゃあ、それも校長と、オレと一杯ずつ。勘定はこっちに」ということで、同じようにロックで味わう。森伊蔵ほどキリっとした味わいではないが、美味しい。臭みも感じない。
「これは原料は?」また、お姉さんが一升瓶を回し、
「これも芋って書いてあります」芋焼酎に対する自分の偏見が、音を立てて崩れ去ったような気がした。
「校長先生は、前に魔王をキープされてましたね」とママが言うのだった。(今思うとすごいかも…)
  その夜はしこたまそこで飲んで、いい気分に酔って、タクシーで帰路についた。
  次の日に、
(昨日、校長と二人で行ったスナックでは、お金出してないよな…)あまり定かではない記憶を辿ってみても、財布の残金を確認してみても、自分がお金を出した形跡が確認できない。
(えー…。二千七百円二杯と二千五百円二杯で、一万四百円。端数は要らん?けど、出す方が言うことでもないし…)職朝も終わって、しばらくは『自分なりの反省会』。まあ、けどそのままにもできないし…。意を決して校長室に行って、ドアをノック。中に入って、
「失礼します。昨日はありがとうございました。これ…」と言って校長の目前に一万円札を差し出した。
「何ぞね、これは?」怪訝そうに言われた。
「いや昨日のスナックで、森伊蔵と魔王の分、『オレ出すから』って言ったんで」と返答すると、
「ええわね、ええわね。また行こう」
「すみません、じゃあごちそうになります。ありがとうございました」ということになった。
  今思うと、校長はかなり芋焼酎に詳しい方で、小さなスナックも芋焼酎については、いろんな種類が揃っていたのかもしれない。(その後、もう一つの校長の行きつけの店で村尾を初めて味わった。焼酎の湯割りについて、「湯を先に入れる」っていう拘りも譲らない人だったし)
  古くから焼酎好きの人達から見れば邪道かもしれないけど、自分はロックで美味しく飲める焼酎はロックでやることが多い。ロックでやって芋等の『臭み』を感じる焼酎は、湯で割って飲む。飲み方を変えると、『嫌な臭み』が『良い香り』に変化したりするのだ。
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